九十九の奏〜欠け月の夜想曲〜
●2012年、夏。
東京の美術の専門学校に通う主人公・百日紅一二三(さるすべり ひふみ)は、町興しのボランティアの手伝いに呼ばれ、友人達と生まれ故郷の町・葛折町(つづらおりまち)へと向かう。
この町にはいくつかの言い伝えが残されていた。
古い器物を奉る風習があり、それらの器物は九十九神と呼ばれる神……妖(あやかし)であること。
それらは人に恩恵を与え、代わりに心(記憶)、命(寿命)を喰らうこと。
そして、九十九神に憑かれた者は、百年の一度の欠け月の夜、九十九神と共に常世へと連れ攫われること……
言い伝えは、民話であり、伝説であり……一二三にとって、それは遠い世界の御伽噺にしか過ぎないはずだった。

